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プロローグ
……悠斗(ゆうと)、元気にしていますか?
こちらは、だんだんと冷え込んできてね、木枯らしが舞ってきたよ。
薄手の白のタートル、ミニスカートロングブーツを履いて、コートを羽織らないといけない季節になっちゃった。
今日は休みで、私は特に用事もなく街へ出かける予定なの。
今年はすごく冷え込むから、東京にも雪が降るかもしれないよ。
悠斗とお別れした日は雪が降っていたよね。
寒い季節になると、ついつい悠斗と過ごした日々を思い出しちゃうんだ。
悠斗。会いたいよ。ものすごく、会いたい。
せめて、声を聞くだけでもいい。
元気に過ごせているのか、知るだけでもいいの。
ねえ、悠斗……。
あぁ、またやってしまった。
悠斗と離れ離れになってから、心に悠斗を思い浮かべて、悠斗に話しかけてしまう。
ついつい、やるクセだ。
あなたは、何年過ぎても私の心から消えてくれない。
私にとって悠斗は、大事な人だった。
まだまだあの頃は子供だったけど、私は悠斗のことが大好きだった。
寒い札幌で全身が熱くなるほど、悠斗に恋をした。
叶わぬ恋だと知っていながら、一生懸命、悠斗を想い、悠斗の笑顔が見たくて頑張った。
悠斗が笑ってくれるなら、なんだって、できる気がしたの。
今、私は二十六歳になって、真面目にOLして働いている。
本来、出会うべき二人ではなかったのだから、今が自然の形。
そうだとわかっていても、やはり胸の奥にある塊はいまだに私を苦しませる。
時が流れようと、純粋にあなたのことが大好きです。
報われなくても、ずっとずっと――。ずーっと、ずっと愛しています。
――月のようなキミ。
月のような柔らかい光で、僕を包み込んでくれた。
僕とキミは、出会う運命じゃなかったのかもしれない。
こうして、会えないでいるのが自然なのかもね。
だけれども。
今宵も月を眺め、キミを想い続けています。
キミに不幸が訪れませんように……。
キミが試練に負けませんように……。
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