♂♀ 神様の泉と異世界からの呼びかけ

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♂♀ 神様の泉と異世界からの呼びかけ

その出来事は突然2人に降りかかった。 いつもの様に学校に通い、授業を受け、部活はしてないのでそのまま帰る。 2人はいつも一緒だ。 生まれた時から隣同士で、生まれた月は同じ。 さすがに日にちまでは同じでは無い。 通う保育園も同じ、小学校も中学校も。 高校まで同じときた。 生まれた頃からの幼なじみと言うだけで、周りからは公認カップル扱い。 高校に入ったら"2人は婚約していて結婚前提の関係だ"なんて言われようだ。 正直、「みゆ」こと源悠希(みなもとゆうき)と結婚してもいいと思っている。 容姿、性格、考え方、行動パターン、得意なもの、苦手なもの、生活リズム、価値観、趣味と、ありとあらゆる事を知っているだけに、気を使うことも無く、また、流れに逆らうようなことも無く、凄く良い関係が築けると思う。 何かの話の時、みゆは"結婚したいよ"的な事を口走ったことがあった。 あれから少し、俺のみゆに対する意識が変わり始めたのだと思う。 今年の高校の入学式前の4月1日にみゆはある物を持ってきた。 "婚姻届"だ もちろんみゆの名前は記入されており、印鑑もついている。 とある結婚情報誌の付録についていたものらしい。 なぜ結婚情報誌なんかをを読んでいたのかは触れずにいた。 それでも、婚姻届としては有効で正式な書類のようだ。 俺はなんのつもりか理解できなかったが、よく考えたら4月1日はエイプリルフール。 俺はからかわれたものだと思い「キツイ冗談はやめようぜ」と言った。 みゆは「これに一希が署名して出したら結婚成立だよ!冗談にするかしないかは一希次第だね」と言って婚姻届を俺に渡しその場を離れていった。 マジか・・・・・・。 心の上では結婚したいと思っている。 ただ、それに対する責任が果たせるのか?と言う思いが重くのしかかり決断出来ず2年がたった。 その間二人の関係は何一つ変わることも無く、その事に触れる事もなかった。 卒業式の日。 高校生活も今日で最後か・・・・・・ みゆからのアプローチ。 2年かけて考え、その答えを今日伝えようと思う。 「今日卒業式の後なんか予定ある?」 「んーーあるけど、一希に付き合うよ!"大事な話がある"とかでしょ?」 「ハハハハ、バレてたか」 「当たり前だよ。どんだけ付き合い長いと思ってるの?」 「間違いない」 「もうバレてるなら」 『ダメ!』 「そこはちゃんとして」 俺の考えなんてお見通しか。 全く持ってやりにくい・・・・・・が、みゆの言う通りだ。 親しき仲にもなんとやらだ。 この先こういう事は多々起きるだろう。 戒めとして心にしっかり留めておこう。 「一希待った?」 「あー少しだけな」 「何その気の抜けた感じ・・・」 「バレちまってるからなんか緊張感なくてね」 「しっかりしてよ未来の旦那さん!」 「ほら、もうそこに出てるじゃん!」 「でもね、女の子はちゃんと言葉にして伝えて欲しいものなんだよ!」 男は結果が、女はプロセスがとはよく聞くがこういう事か。 「あーえー・・・源雪子さん、俺はあなたの事が大好きです。今すぐは難しいけど20歳なったら俺と結婚してください」 「うわー恐ろしく棒読み・・・・・・って20歳なの?」 「役所に紙出して、はい結婚しましたーってのはなんか違う気がして・・・」 「俺、大学には行かないから、お金稼いで立派な結婚式しようと思ってる」 「ダメかな・・・・・・?」 「プロポーズの答えを疑問形で聞いてくるんじゃない!」 「あはははは・・・」 「それでいいよ!不束ものですけどよろしくお願い致します」 みゆはにっこり笑顔で返事をした。 みゆは手のひらをポンと叩いた。 なにか閃いたようだ。 「それなら1ついい事思い浮かんだ!」 「なに?」 「その前に聞いておかなければならない」 「なんだよ勿体ぶるな・・・・・・」 「一希は私の事好き?」 「当たり前だろ。今プロポーズしたばかりじゃん」 「どのくらい好き?」 「結婚したいくらい」 「それだけ?」 なんだ?? 何が言いたいんだ? 「いや死ぬまで一緒にいたい!」 「そう・・・死ぬまでか・・・・・・」 なんなんだ? 何を期待してるんだよ!? 「私はね、死んでも、来世でまた一希と出会って一緒になりたいんだ。その次もまたその次も・・・・・・」 「俺もだよ!」 「そんなの当たり前すぎて出てこなかった」 などと苦し紛れな言い訳をして強がってみた。 みゆは上目遣いで聞いてきた。 「ホントにホント?」 「ああ!本当だ」 「ホントにホントにホント?」 「ああ!本当に本当だ」 「なら、神様の泉に行ってみない?」 「神様の泉?」 「そこに署名した婚姻届を沈めると、来世でも一緒になれるんだよ!」 「それだけで?」 「そうなんだけど、1つ絶対ルールがあるみたいなんだ」 「絶対ルール?」 "婚姻届を沈めた日から3年以内に結婚しないと、その2人は現在も未来もこの先永遠に出会うことが出来なくなる。ただしその間の3年間は、お互い必ず手の届く所に存在し合える" 「ってことみたいなの」 「何だか嘘くさくない?」 「来世でってのは、確認できないから分からないけど、占いでは来世でも一緒になれるって出るみたいだよ。でも、3年以内に結婚しなかった2人が会えなくなったって話は本当みたい」 「偶然じゃないのか?」 「あと、20年ぐらい前の話らしいんどけど、3年間は一緒にって話には実話があるんだよ」 "愛するその2人は結婚を約束していたんだけど、彼女はとても重い病気にかかり、余命3ヶ月と宣告され結婚断念した。しかし、彼は諦めきれず色々助ける方法を探していたら『神様の泉』の話を知る。たとえ3年だけでも生きることができたら何か助ける方法が見つかるかもしれないと考え、泉に婚姻届を沈め結婚した。すると彼女は宣告の3ヶ月を過ぎても生きていたそうです。そのあとも生きて生きて生きて続けたそうですが、ちょうど3年経った翌日に息を引き取ったそうです。彼もその日に命を絶ったそうです。来世で一緒になるために・・・・・・" 「いや絶対たまたまだって」 「たまたまで、3ヶ月の命が3年になるわけないじゃない!それに、3年丁度ってのも不自然だし」 「元々余命3年だったのを3ヶ月と誤って診断したんじゃないのか?」 「そんなのヤブ医者にも程があるでしょ!それに、ちょうど、その当時最高の医療技術を備えた施設ができて、そこで調べたって話だから間違いないと思うよ」 「と、まあ、そういう泉なんだけど、どうかな?」 これはさっきと同じだ。 プロセスが大事なやつだ。 実際に来世で一緒になれるかどうかは分からないけど、そうありたいという想いを確認し合いたいんだ。 こちらから進んで行くべきだな。 「行こう!今すぐ行こう!」 「な、なに急に・・・?さっきまであんなに疑ってたのに・・・」 「いや・・・その・・・、俺は20になったら結婚しようって約束したし、絶対する。だからその絶対ルールは問題ない。なら3年間一緒にいられて、来世でも会えて一緒になれる。行かない理由なんてないだろ?」 「それにさっきも言ったろ?来世でも一緒にって想いは口に出すまでもなく、俺の中では大前提だ。でもみゆは口にして欲しいんだろ?」 「だから行こうって言ってるんだよ!」 「一希・・・・・・大好き!」 「あーーくそ恥ずかしいから早く行くぞ!」 「はい!」 「なんかーお姫様抱っこされたいな」 「んな恥ずいこと出来るか!」 「はーい、新婚生活始まるまで我慢します」 「気が早えーよ・・・・・・」 そうして裏山の神様の泉に着いた。 「着いたな・・・」 「緊張してる?」 「そりゃ多少な」 「じゃ行くよー」 「ま、待て!!」 「もう、何よいいとこなのに・・・・・・」 「あれだ!記入漏れとかないか?ハンコちゃんとおしてるか?」 「もう、さっきから5回目だよ!!何回確認するんだよ!」 「全部完璧です!」 「今度こそいくよー」 「お、おう」 「せーの」 2人は一緒に婚姻届を泉に沈めた。 ・・・・・・。 ・・・・・・。 「なんか感じた?」 「いやなんも・・・・・・」 「これで合ってるよね?」 「合ってるも何も沈めるだけじゃん・・・・・・」 ・・・・・・。 「まぁ、神様なんてそんなもんなんじゃねーのか?こう、気づかれないようにそっと・・・・・・的な」 「そうか・・・そうだよね!」 「ああ、そうさ!」 2人はそうだと信じて神様の泉を後にした。 「早く結婚したいー」 「お前俺の話聞いてなかったのか?」 「聞いてたよー!聞いてたけど早くしたいものはしたい!」 「ったく・・・・・・」 「でも、入学式の時みゆが婚姻届持ってきた時はマジでビビったよ」 「私もだよ・・・・・・」 「え?」 「あの時署名されて本当に手続きされたらどうしようって・・・・・・」 「なんだそりゃ!?」 「お前本気じゃなかったのかよ・・・・・・」 「嘘じゃない。一希に対する気持ちは嘘じゃないけど、それをどう伝えていいか分からなくて・・・・・・」 はぁ~・・・ 「初めてのラブレターが署名捺印済みの婚姻届って、どういう神経してるんだよ」 「あははは」 「でも、2年間真剣に考えてたくれたんだよね。ありがと!」 「お、おぅ・・・」 俺はみゆと手を繋いでみようかと思った。 「みゆ!」 「なぁに?」 「お姫様抱っこは恥ずかしくて出来ないけど、代わりに手でも繋いでみるか?」 「うん!嬉しい!」 そーっと手を伸ばす。 その時一希は足元に違和感を感じた。 足元を見ると何やら青い丸の中に幾何学模様のような物がある。 !!!! 魔方陣!? 俺は怖くなり魔方陣から抜け出そうとしたが結界のような見えない壁があり出ることが出来ない!! 俺はみゆに助けを・・・・・・みゆ? みゆの足元にも同じく赤い魔方陣がある。 「みゆ!?みゆーー!!」 「一希!?一希ーーーー!!」 2人はお互いに叫びながら、お互いの元へ行きたくて、見えない壁を必死に叩く。 と、2人は意識が薄れていく・・・・・・ みゆ・・・みゆ・・・み・・・・・・ かずき・・・かずき・・・かず・・・・・・ 2人の意識は遠く遠く離れていった。
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