第3話

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「ところで、ギコいって何?」 「ぎこちない感じ?」 さっちゃんと紗香が話しているのをぼんやり見ていた。どこまでを話していいのかなって思いながら。ふっちーがモテてること。それに、ふっちーにも“好きな子がいる”事を 頭の中で思い出して、私なら好きな人の情報としてどこまで聞きたいかなーと置き換えて考えた。 ふっちーとはそれも秘密って約束したし、私が聞きたかったとしても、ちぃこちゃんと斉藤さんの気持ちを勝手に話していいものか……。 「ねぇ、朱里はどう思う!?」 不意に話を振られてハッとした。 「あ、ごめん聞いてなかった」 「Aくんが紗香に告ったことをB子に伝えた時ね、横に居た子が紗香の事、フォローしてくれたんだって」 「うん、その子の呼び名、D子とE子どっちがいいかな!?」 ………そこ、どっちでもいい。てか、今後も出てくる事がそんなにあるもんか? 「……さっちゃん(ツー)でいいんじゃない?」 「あ、いいね!」 「は!? 何で私!?」 「だって、さっちゃん絶対にフォローしてくれるタイプだもん」 「だって、紗香が悪いんじゃないもんね」 「……そう、なんだけど、私も朱里に置き換えるとね、ふっちーが朱里に告白したら……恨むかもしれない」 冗談とも、本気ともとれるニュアンスで紗香がそう言った。 「ええー!? ちょっとやめてよー!」 「朱里は悪くないよって、私が言うから大丈夫!」 さっちゃんが笑う。 「友情にヒビー!」 「紗香……あんたホントに、ふっちー絡むと変だよね!」 そう言って、みんなで笑った。いや、ふっちーが私を好きなわけないから大丈夫なんだけど。 「紗香、ふっちーにも、変な奴って言われてたな」 「え?」 つい、言ってしまったけど、これは……いいか。 「可愛いけど、変な奴だってさ。この前の忍び込み、バレてたよ」 「えぇ!? そうなの!?」 「紗香、ふっちーの前でも普通にしてたら、付き合えるかもよ」 「ふ、普通って何? 普通って!?」 「その、Aくんと話すみたいな感じじゃない」 さっちゃんがそう言うと、紗香は思い出すように、少し黙って 「どんなんかも覚えてないわ」 そう言った。 「つまりは、意識しすぎね」 さっちゃんが呆れたようにそう言った。 「好きなのに、意識しないなんて不可能だもん」 紗香がポテトの山から一番長いのを摘まむとそれでケチャップをすくうように付けて口に入れた。 「ふっちー、好きな子いるのかなぁ……」 ボソッとそう言った。 知ってるのに言わない、その後ろめたさに、私の心臓がドキンと跳ねた。
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