第3話

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水曜日になって 「何か、3組の女子揉めてるらしいよ」 さっちゃんがお弁当を、広げながら続けた。 「部活一緒の子が言ってた」 「それって……」 教室を見回して……いや、横を確認して、ふっちーがいないのが分かると 「この前の、グループだったりして」 そう言った。 その時、ガラッと勢いよく教室のドアが開いて顔を出したのは……斉藤さんだ。噂をすれば……。 バチッと目が合うと、ツカツカと私の所へやって来た。手には……マグとお弁当。横の椅子を持つと私とさっちゃんの席に座った。 「今日、お弁当一緒にいい?」 「あ、うん。えっと、こちら、さっちゃん」 「どうも」 さっちゃんが挨拶をする。 「こちらが……」 「斉藤睦美です。むっちゃんって呼んで」 斉藤さんが自分でそう言った。 「むっちゃん、どうしたの?」 そう言うさっちゃんの順応性にビックリしながらも、聞かなくてはならなかった。 だけど、その前に…… 「ねぇ、むっちゃん、その椅子、ふっちーのだよ?」 「わぁ! 違うの! 知らなかったの!」 今日もむっちゃんは言い訳から始めた。 無難な前の席から椅子を借りると、斉藤さん……改め、むっちゃんは話し出した。 「月曜日に、ちぃこに話したの。じゃあ泣いちゃって。で、何で今更! とか、振られたからって! とか……色々言われて……自覚が遅かったって説明したんだけど……聞いてもらえなくて。昨日1日我慢したんだけど、堪えられなくて………」 「あー、お昼ご飯くらい美味しく食べたいよね。何か、同意してくれる子は居なかったの?」 「いたけど、とりあえずちぃこが泣いたから、誰も何も言えなくなって……」 「何だろう、なんだかねぇ……」 「しばらく、ここで食べてもいい?」 「あー、いいよ、おいで」 そう言うと、むっちゃんは笑ったけど、直ぐに信じられないくらい赤くなったので、ふっちーが教室に入って来たことが分かった。 「それじゃあ、言わなくても、どのみちバレたよね。自分の口で言っただけでもエライと思うけど。だいたい、先着順でもないじゃんね」 さっちゃんがそう言って、私も頷いた。ドカッと、席についたふっちーが 「誰?」と訊く。 「ん? 3組のむっちゃん」 「へぇ、宜しくむっちゃん」 「あ、宜しく、ふ、ふっちー」 と、むっちゃんが赤いながらもそう返した。 「ねぇ、ここへ来たのってさぁ……」 と、さっちゃんが目を細めると 「ち、違う! たまたま、たまたまだから!」 むっちゃんが乙女の顔でそう言った。
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