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「何やってんの、あんたら」
さっちゃんの言葉はそりゃそうだろって感じで、私は月刊バスケットボールを手に、1ページづつ捲ってはふっちーに見せていた。
「コイツさぁ、最新の“月バス”見せびらかすだけで、俺に読ませてくれねぇんだよ」
ふっちーが不満をさっちゃんに言う。
「は? 月バス!? 何で朱里が月バスなんて持ってんの?」
「そうだろ? おかしいんだよ。見てもいいけど、触ったら駄目っつんで、こいつが1ページづつ捲って……って、何でだよ!」
我ながらバカだなぁと思う。片時も離したくなくて、わざわざ学校にまで持ってきてしまった挙げ句、バスケットマンのふっちーの横で広げたのだから。
「何でなの? 朱里。何で買って、何で触っちゃいけないの?」
さっちゃんにもそう聞かれ、そりゃあ聞かれるよね。ふっちーにも“気になる子”の事は少し話した事があるし、さっちゃんは、よくご存知だ。
私は昨日の出来事を正直に話すことにした。
「いや、でも朱里、まだ本屋に通いつめてたんだ!」
そう言われて赤くなった。
「そいつも、バスケやってんじゃねぇ?」
「やっぱり、そう思う?」
「んー、月バスってあんまり読まないだろ。あ、今体育がバスケとか?」
「余計、読まないわ」
と、さっちゃんがつっこむ。
「今日、放課後来るんだろ? K高のバスケ部なら間違いなく、来るぞ」
考えてみれば、そうだ。固まる私に
「見といてやろうか?」
ふっちーがニッと笑ってそう言った。
「背。背が高くって……か、格好いいの……く、靴が……白でバッグが黒……」
「落ち着いて、朱里」
「そうよ、落ち着きなさい、朱里ちゃん」
ふっちーがからかってオネェっぽく言ってくる。
顔が熱い。けど、会えるかもしれない。そう思うとじっとしてられないくらい、心が波たった。
「というわけで、これは読ませろ!」
そう言ってふっちーが月バスに触れた。
「きゃー! やめてぇ!」
「仲良くなって、また触って貰えばいいだろ? 何なら直で触らせて貰え! こんなので満足してねーで」
……そう、だけどさ。直って、もう。
「見てみろよ、背。190くらい?」
「へぇ? そんなにないよ! ふっちーくらいだよ」
「強豪だとCは190くらいザラだぞ?何なら2メートルだって優に越える」
「そうなんだ……」
「ま、公立高の俺らにゃ、知れてるけど180そこそこだと……細い? そいつ」
「いや、ちょうどいいくらいで……」
格好いいって言いかけて止めた。そこはきっと聞かれてないから。
「俺と同じポジションくらいかなー。ま、今日見に来い!」
「そうだね」
はぁーっとため息を吐いて、ふっちーに取られて月バスの無くなった机の上に、教科書を出した。
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