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第1話
「ねぇ、ふっちー、元気?」
何度このセリフを聞いただろうか。小学校、中学校と同じ学校で同級生だった石橋紗香は、学校帰りの制服のまま、今日も私の部屋にやって来た。
家が近所なのもあるけど、私と紗香は仲が良かった。
「そうしょっちゅう聞くなら、同じ高校行けば良かったんでしょ!?」
呆れるように私は紗香にそう言った。このセリフだって、もう何回言っただろうか。
「だってさ、追いかけたと思われたら嫌だし」
紗香は中学の時からふっちーこと、渕上雅紀に片思い継続中だ。私たちは中学まで、同じ学校に通っていた。
高校からは私と渕上くんはN高、紗香はK高だ。紗香はなぜかふっちーの前になると、見事なまでのあまのじゃくに変身し、同じ高校を受験しなかった。
あの時、ふっちーが
『石橋も同じ高校受けるんだろ?』
なんて、聞いたもんで
『は!? 何であんたと同じとこ受けるのよ、ち、違うから!』
なんて事になって……
「ああ、約束しなくても会える日々よカムバーック」
そう言ってジメジメと湿っていた。
「まあ、いいじゃん。K高制服可愛いし!」
モスグリーンとグレーのチェックの可愛いプリーツのスカート、ブレザーにボウタイ。紗香の制服は、どこかのアイドルグループが着てるような制服だ。
「そうかなぁ? N校のセーラー服の方が男子ウケいいよ、何かやらしーって」
「……え……」
確かに、こっちはグラビアアイドルが撮影用に着そうではある。でもヤだな、それ。
「男子の頭ん中なんてそんなんだよ、きっと」
「へぇ、ふっちーもかな。聞いてみよ」
「ちょ、違う、ふっちーは違うから!」
「あはは! 冗談だって、そこは考えたくないね。K校は男子も制服格好いい!」
男子は同じブレザーに同じチェックのパンツ。斜めストライプのネクタイには小さく校章が入ってる。
「え!? そうかなぁ。男女ほぼ一緒だしなぁ。それより、N校の学ラン!! 絶対ボタン欲しい」
私の高校N高は、男子は学ラン、女子はネイビーにワインレッドのラインの入ったセーラー服だ。
「発想が古い! てか、入学したとこだし!」
ボタンもらうまで3年待ちだ。
今西朱里。高校入学して少し馴染んだ、5月の事だった。
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