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第3話
ぐったり。ヤマ勘、一夜漬け、そんな不安も、今日はもうどうでもいい。寝不足で眠い、だけど、とりあえず
「終わったー!!!」
教室を出て叫んだ
「後は野となれ山となれ」
そう言った私に
「いや、追試あるらしいよ?」
さっちゃんがそう言う。
「今日だけは、忘れさせて?」
「はは! だね!」
「さっちゃん、部活は?」
「先生のご意向で今日までは休みー!」
「おおー! 時代を先取るホワイト部活ですね!」
「何か食べて帰ろう!」
「賛成!! 紗香、呼ぶ?」
「声掛けるか。うるさいから」
と、さっちゃんはスマホを取り出した。
「あはは! 紗香にとって唯一の情報源だからね」
ふっちーの情報源。特に新しい情報なんてないけど。……って、ある!言っていいかな?“ふっちーがモテてる”って事くらいは。
「はいはーい! 何か久しぶりぃ!!」
いつになく、紗香はハイテンション。
「何、良いことでもあったの?」
さっちゃんがそう聞く。
「テストが終わった。違う意味でも終わった。チーン。だけど、来週はふっちーに会える!!」
「終わったのかいっ! テスト。会えるってか、隠れて見るだけでしょ、どうせ。追試が放課後とかなら、見に来れんの?」
さっちゃんが紗香の痛いとこを連突きして「ギリギリ、ギリギリでいいから追試逃れたい。そして、ふっちーが見られるなら、耐えて見せる」
と、紗香は奥歯を噛みしめるように言った。
「何に耐えるのよ」
「もしかして、人間関係?」
私は斉藤さんの話を思い出してそう聞いた。
「……テスト前にAくんから告白された」
「……わっ、どうしたの、それ」
「B子には……言ったの?」
「勿論、私はふっちーが好きだから断った。B子には、何か悪いなって思ったけど、正直に言った。えっと、さっき。B子のテストに影響が出ないように」
「うん、それが正しいと思う」
「こればっかりは、仕方がないもんね」
「うん、紗香のせいじゃないよ」
「うん、B子がそう思ってくれたらいいんだけどね」
「分かってると思うよ、きっと」
「分かってると思う。だけど、分かっててもどうしようもない気持ちってあるわけでさ。ギコいわ、テスト期間で良かったけど……週明け……どうしようかなって感じ」
ああ、どこもかしこも、モテる男はいて、大変だ。女子の人間関係も、大変だ。
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