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「婚約をしたら、正式に銀行にも出向くよ」
「ありがとう、賢人さん」
賢人は申し分がない人。両親に挨拶をすませていよいよ結納の日取りが決まった。
千尋が別の銀行員を連れて父を訪れたのは、結納を交わす前日。
「え、じゃあ……」
唖然とする父と、やっぱり隣でおろおろしている母。
「はい、代わりになる企業を見つけました」
「打切りは免れる、と」
「上とは掛け合いました。まだ融資は保留段階ですが、引き上げは再度見直しを検討中です」
私は両親の後ろで力が抜けてへたり込む。
なんの為に急いで結婚をしようと――
「新しい取引先については、彼から詳細を聞いて下さい」
「いや、まさか銀行さんがここまでしてくれるとは」
目の前で繰り広げられてる会話がもう耳に入ってこない。
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