告白の欠片

15/22
96人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「婚約をしたら、正式に銀行にも出向くよ」 「ありがとう、賢人さん」 賢人は申し分がない人。両親に挨拶をすませていよいよ結納の日取りが決まった。  千尋が別の銀行員を連れて父を訪れたのは、結納を交わす前日。 「え、じゃあ……」 唖然とする父と、やっぱり隣でおろおろしている母。 「はい、代わりになる企業を見つけました」 「打切りは免れる、と」 「上とは掛け合いました。まだ融資は保留段階ですが、引き上げは再度見直しを検討中です」 私は両親の後ろで力が抜けてへたり込む。  なんの為に急いで結婚をしようと―― 「新しい取引先については、彼から詳細を聞いて下さい」 「いや、まさか銀行さんがここまでしてくれるとは」 目の前で繰り広げられてる会話がもう耳に入ってこない。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!