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応接室で待っていたら、ファイルを抱えて現れたのは千尋。父の会社を担当しているから予測はしていたけれど、やっぱりちょっと気不味い。
「普通は御断りするんですが、娘さんがいらっしゃるので」
この前と同じように千尋が淡々と説明を始める。どれくらいの貸付か、父の会社の年間利益率、回収の見込み率、それに取引実績等を。
「わからないな、何故これで打切りの方針に?」
「この取引三社がじきに撤退なんですよ」
「あおりを喰らうのか。……なるほどな」
やわらかな雰囲気の千尋と。穏やかな落ち着いた空気の賢人が向かいあって話を詰めてる。私はずっと黙っているよりなくて、二人を見てた。
「あ……!」
広げたファイルの先に珈琲のカップがぶつかり、ガラステーブルの上に珈琲が広がる。
「拭くものを……っ」
鞄からハンカチを取り出す。慌てて立ち上がり膝の上から鞄が口を開いたまま絨毯の上に落ちる。
幾つかの中身が絨毯の上にばら撒かれて、千尋が腰を屈めて拾い上げた。
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