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「これ……!」
千尋がパスケースを手にしている。濡れたハンカチをそのままに千尋を振り返った。
『茉奈、君が――』
千尋に見られた。ちぎれてしまったあの日の欠片を。
「茉奈、これ……」
「か、返して」
パスケースを掴み取る。千尋には見られたくなかったのに。
「君達は知り合いだったの?」
賢人が私達を訝しげに見てる。誤解を招く前に説明しなきゃ。
口を開き掛けた時、ドアがノックをされて。
「浅見さん、宜しいかな」
賢人自身への話らしく、私は席を外すと応接室を出た。
なんて眩しい陽射し――
「茉奈……!」
「千尋」
銀行裏の扉が開く。千尋は私を見つけて駆け寄ってくる。
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