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『茉奈、君が――』
掠れた文字。ちぎれた紙をケースから引き抜く。
「捨ててなかったのか」
「違う、捨てられないの」
あの日から私の時間は止まってる。千尋を大好きな私が何度も過去を振り返る。
「破れた続きを知りたいの」
千尋はふっと微笑んで、ちょっと寄り道をしようって近くの公園へ。
鞄から手帳を取り出すと、角の方をビリビリとちぎり取る。ペンを出してそこに何かを書き込んだ。
「貸してごらん」
私の手の中から手紙のはし切れを取り、新しく破った紙を繋げる。
『茉奈、君が』『心から幸せでいて欲しい』
二枚の紙に書かれた千尋の文字。
「茉奈が好きだよ。それは本心」
ちょっとだけ照れくさそうに。千尋はやっぱりまた笑っている。
紡がれた言の葉を大切に胸に抱きしめた――
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