告白の欠片

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 翌朝、目が覚めたらうちの中に不穏な空気が漂ってた。会社を経営する父と母は経理を担当する。ほそぼそだけど長年続く小規模な繊維会社。 「どうして急に」 「営業担当が変わっていきなりの事だ」 不安そうな母に、ご機嫌斜めな父。どうしたんだろう、話し掛けづらい嫌な雰囲気だと思っていたら、訪問を告げる呼び鈴の音が響く。 「はい、……千尋!?」  「……久しぶり」 スーツをびしっと着こなして。よっぽど昨夜の男性達よりも素敵な立ち姿に、思わず一瞬見惚れてしまった。 「千尋、どうして?」 「俺が……担当」 胸元のネームプレートに視線を落とす。父の会社が融資を受けている銀行の名札ですぐに理解ができた。 「まさか、千尋が……?」 学生時代に大好きだった人と、こんな形で再会をするなんて。  両親の願いは虚しく再融資は却下。さらに、現在貸付中の融資引き上げが決定になったと千尋が二人に説明をしてる。 「そんな、それじゃうちに倒産しろと言っているようなものだ」 激昂する父と傍らにおろおろとしている母。二人と向かいあって千尋は顔色ひとつ変えずに淡々と話す。
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