告白の欠片

5/22
前へ
/22ページ
次へ
 私の部屋で千尋は壁に貼られたコルクボードの写真を眺めてた。 「懐かしいなぁ、皆今は何をしてんだろうな」 「海外に行ったきりの人もいるわよ。結婚した人も」 あたたかな湯気があがる。淹れたての紅茶の香りが優しく辺りに漂う。  今なら聞けるかもしれない。そんなふうにも思えてしまう他愛もない会話が続いて、ようやく千尋が笑顔を見せた。 「なんだ、やっぱり千尋だわ」 「仕方ないだろ、さっきは仕事中」 大好きだった頃よりも大人びた、穏やかな男性の表情に胸がどきどき高鳴る。  でも、私は今日から必死で婚活をしなくちゃならない。  「茉奈、俺さ。あの日のこと、ずっと謝りたかった」 あの日。それがいつなのかは聞かなくてもわかる。  手紙がふたつに引き裂かれた―― 千尋と最後に会った日のことだ。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加