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「あいつとはなんでもなかったよ。なのに、あの時は悪かった」
サークルの部屋で。千尋が便箋に何かを書いてた。千尋が私に渡し掛けた時、同サークルの女性が入って来て。便箋を鷲掴みに引っ張られた。
当たり前みたいに破れて。私の手の中にはちぎれた断片だけが残ってた。
「あれからずっと、避けたりしてごめんな」
千尋は謝ってくれたけど。私は知っていたの。女性が陰険な嫌がらせを私に繰り返していたから、千尋はそれをやめさせる為に彼女のそばにいたって。
何度も話しかけようとして、避けられているうちに心がぽきっと折れて諦めた恋。
なのに友人から事実を聞いてしまったら、千尋を忘れることができなくなって。断片をいつまでも捨てられずにいたの。
「ありがとう、千尋」
淡い恋は淡いままに消えてしまうんだな。私が笑ったら、あんまり無茶をするなよって、千尋は帰って行った。
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