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高級感溢れるホテルの会場――
華やかな衣装に豪華な食事。友人にお誘いを受けて参加したパーティーは、ちょっと私には背伸びをした場違いな処だった。
「間もなくフリータイムです」
司会者の進行を無視して友人に声をかける。
「ごめんね、先に帰るわ」
「これからがチャンスなのに。茉奈、まだ忘れられないの?」
そんなんじゃないわよ、苦笑いを残して会場を出る。追いかけて来た男性はいたけれど、ときめきが足りなくて御断り。
いったいどれだけの人が出会いを求めてるのかな。婚活パーティーで運命の人に出会えたら、それも幸せだけど。
乗り込んだタクシーの中でパスケースを取り出す。そこには便箋の断片がはさんである。
茉奈、君が―― たったそれだけ。
「君が……」
破れてしまった言葉の続きが知りたくて、捨てられずにいた手紙。学生時代の淡い恋の思い出。
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