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第九話 帽子
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あの時俺は正しい選択をしただろうか
そんなの今でも分からない
でも見捨てるよりは正しい選択だったと思う
川で溺れていたのは小学一年生ほどの子供だった
目立った外傷はなく 呼吸もしていたが 意識はなく どうしたらいいかも分からなかった
ありえない
嘘だろ
そんな驚きの感情と
大丈夫か
目を覚ますのか
という恐怖の感情が入り混じっていた
まるで
自分の子供のように少女を思っていた
とりあえず少女を川から引き上げて 近くのベンチに寝かせた 壁はなく 屋根のついた軽い休憩所のようなもので 少女のことを考えると いち早く移動させたかった
意識がないのがとても恐ろしい
まるで自分のことのように心配していた
「…どうする?」
創太が聞いた
それは『どうしたらいいか分からない』ということだった
それは当然のことであった こんな状況に陥ることなどほぼほぼないに等しい
「とりあえず…病院かな…それとも警察?」
佳奈が答えた
それが 考えられる中でそれが最善の策だと思った 皆もそれに共感し 警察へと向かった
依然 少女は意識を失っていた
「近くに小さいが診療所がある、軽い手当くらいならしてもらえるはずだ、とりあえずそこに届けよう。」
もっといい方法はないのだろうか
考えても 思いつかなかった
創太が少女を抱きかかえ そのまま診療所に向かおうとしたとき 俺は少女が溺れていた場所の近くに 帽子が引っかかっていることに気がついた
「ん…?」
不思議に思い 近づいて帽子をとってカバンの中にしまった
赤いリボンの巻かれた 麦わら帽子だった
「仁人くんー?そろそろ行くよー」
佳奈に呼ばれて 三人(+少女)と合流し 診療所へと向かった
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