始まり

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始まり

「行ってらっしゃいませ」という組員の言葉を聞きながら敷居を跨ぐ、、、 ここまではいつもと一緒だった。強い目眩に襲われ敷居を跨いだ直ぐの階段を踏み外し転げ落ちて視界が暗転した。 目を覚ますと白い空間に佇んでいた。 俺以外居ないと思っていた空間を見渡すと俺が倒れていた。 思わず揺り起こそうと手を動かした瞬間に混乱した。 傷ひとつない綺麗で細い白い指、、、明らかに見慣れた俺の手ではない俺の指はこんなに細くないし白くもない、、、穢れを知らないような綺麗さもない。 思わず、身体を弄(まさぐ)ってしまったのは不可抗力だろう。 現状把握のために倒れている俺を揺り起こすことにした。 「おい、起きろ」と声を出してまた混乱することになった。声も俺のじゃねえ。何だこの色気のある優しいような声は!俺の声はもっと低くかったぞ!と頭を抱えてしまったが、気を取り直して横たわっている俺に手を伸ばす。 揺すること数回。目を開けた俺の顔が驚愕に見開かれた。なんとも言えない。自分の顔。一言で表すなら"キモい"だ。仏頂面で極悪と定評のある俺の百面相を目の当たりにしてしまい、思わず片手で顔面を覆ってしまったのは仕方ない事だろう。 *
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