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星竜樹の剣士
―創生暦1200年、辺境の村アルハダ―
僕は……あの日からずっと、探し続けている。五年前に一緒に秘密基地で遊んでいた少女……リリスを。
けど、今さら彼女が見つかったところで僕は何て声をかけていいんだろう?僕の心はいつも彼女の無事を祈ることしかしていない。連れ去られたのかも分からないのに。
そして今僕は…この辺境の村アルハダで暮らしているわけだけど、それも今日で終わりだ。
毎年この村では十三歳の月を越えた少年少女は町に出て職探しをすることになっている。だから、先月で十三を迎えた僕も例外なく町へと出ていくんだ。
「おはよう、カズキ。とうとうこの日が来ちゃったわね。」
彼女の名はダリア。この村にある魔術学院で常に学年の一番上に立っているほどの天才だ。そして、リリスを失った僕にとっては、かけがえのない大切な存在だった。
村を出ることを知って、僕に渡したいものがあるという。
「おはよう、ダリア。僕に渡したいものって何だい?」
「これ……なんだけど。」
ダリアが見せてきたのはコハクが埋め込まれたペンダントだった。そのコハクが何の樹の物なのかは分からなかった。
「私のお父様が村の衛兵の長をやっているのはカズキも知ってるでしょ?それでさ…先日お父様が、竜樹を討ち取ったって言ったから、気になって見に行ってみたら…たまたま樹液が固まってコハクになってたからさ…」
「竜樹のコハクかぁ…おとぎ話だけかと思ってたけど、本当に存在したんだね。でも、よかったのかい、見つけたのはダリアなんだろ?」
「いいの…だってさ、カズキにしばらく会えなくなっちゃうような気がしたから…その……私の想いを込めて作ったの。」
「そっか、ありがとうダリア。でも、大丈夫だよ…きっといつか、僕の願いを叶えて必ずこの村に帰ってくるよ。そしたらまた、いろんな魔術を教えてね。」
「うん……待ってるわ!その時はリリスさんも連れてきてね!カズキの大切な人なら、一度会ってみたかったの。」
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