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帰り道、前を歩く清豊の後ろをついて歩きながら、香織はまだ鼻をすすっていた。
バス停につくと、バスが来るまで一時間近くある。二人は並んで、がたつくベンチに座った。
急に清豊は香織の方を見ると、真面目な顔でこう言った。
「俺、佐倉のことが好きだ」
「は?」
急に言い出した男を、不審な目で見る。
「こんな雰囲気の時に、なに言ってんの?」
「近さんも言ってただろ」
気にせず、清豊は香織に言い聞かせるように続けた。
「幸せになって下さいって」
「……馬鹿」
こんな男に付け込まれてはいけない。そう思いながら、香織の目からはまた大量の涙がこぼれた。
二人だけの国。
哀しくも美しい、永遠の国。
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