あなたはトラウマとどう過ごしますか?

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次の日の朝、 雨粒が窓をうちつき目が覚める。 土日の試合での疲れ、精神的なショックもあり、 学校へいく気がしない。 体温計を片手にひざにこすりつける。 38度で止めた体温計。 「今日無理。学校休む」 おふくろが学校に電話をし、「じゃー私はいってくるからー、今日帰り遅いけどしっかり寝ときなさい」足早に仕事に向かう。 家には一人きり。 一人でいるには大きな家である。 5人家族で小学2年生の時に一軒家をたてて、ここに住んでいる。 5人家族。 一件騒がしそうな家族を思い浮かべるが、 高校卒業後すぐに東京に住みはじめた長男、 単身赴任という名目で別居をしはじめた父親、 このままだと成長しないということで家を追い出された次男、 5人家族でそろう。  そんなこと奇跡と思って過ごしてきた。 リビングにいき、テレビをつけ、ソファーに寝転ぶ。目の前の机にはおふくろが用意したであろう朝食がラップにつつまれおいてある。 「感謝」 そんな思いもなく、ラップを無造作にやぶりつけ、朝食を口にする。 なにも考えることもなく、時計の針は進む。 「てらりらりん♪」 携帯の音が雑音をかきけし、耳に届く。 れいからだった。 「お兄ちゃん!今日体調不良で休んだってきいたけど、嘘でしょ?笑笑」 れいには前に体温計の使い方を教えていたからバレていた。 「そう。嘘。だいきに今日部活も休むっていっといて」 「わかったー。昨日は勝ててよかったね!今度の土曜日も応援にいくー」 勝ててよかった。このなんでもない言葉が突然胸につきささった。 勝ててよかった。 勝ててよかった。 根本的な当たり前のことだった。 自分本意なプレー。自分がよければチームが負けてもいい。そんな考えが心の奥底にあったからかもしれない。 ふとコーチの言葉がよみがえる。 「なんでお前を外したかわかるか?」 その答えは。。。 朝ごはんを食べ、ボールを片手に家を飛び出す。 雨の中、ぐちょぐちょの公園のグラウンドでひたすらボールを蹴りはじめた。 僕のためにチームがあるんじゃなかった。 チームがあるから僕がいる。 答えはそれだった。 がむしゃらに、ただがむしゃらにボールを蹴った。 しかし、思い通りの場所にボールがいかない。 雨か。。。  いやトラウマか。。。 心ではないなにかが左右していた。 勝手にシュートを拒んでる。右足の震えが止まらない。 ーーーーーーーーーーーー トラウマって そんなこと大丈夫だって、気にするなって言われても、 心ではそう思っていても、 不思議なくらい身体に反応でちゃうよね それに向き合っていくって大変なものだけど、 治す薬も方法もしらないけど、 そのトラウマにあなたはむかっていきますか? それとも離れますか? どちらも正解だと思います。 逃げるって言葉は絶対使ってはダメ。 逃げてるわけじゃなくて、離れている。ただそれだけ。 逃げるって言葉を使いたいなら、 トラウマから逃げて、それで自分らしさを取り戻せるなら、逃げることが正解です。 なによりも自分を大切に ただ僕はこのときはチームのために 向かっていくことを心にきめました ーーーーーーーーーーーー あのときの歓声、あのときのシュートをする一瞬のことを考えると右足が震えていた。 右足を殴っても殴っても震えがとまらなかった。 負けず嫌いの僕は、ある程度努力で結果をだしてきた。 50メートル走は6秒0。 シャトルランは186回。 サッカーのために鍛えた足。 「さて、どうしたものか」 不安というよりそのときは冷静だった。 家に戻りシャワーをあびる。 右足の震えは止まっていた。 試合までまだ5日。ゆっくり考えよう。 ハクション! あ!体調はみるみるしんどくなってきた。 嘘をつくと真実になりますよね。 シャワーから出て、携帯が光っている。 れいの折り返しだ。 「そーいえばさ、お兄ちゃんの連絡先教えてっていってる子がいるんだけど、教えていい?」 「めんどくさいからいい」 そういって携帯をとじ、熱を計ったら38度 言霊は大切にしたほうがいい。 よろよろになった自分はベッドに横になり、後悔をしながら眠りに入る。
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