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元風俗嬢と闘病生活
れなこはパニック障害とうつ病の精神疾患を患っていた。
日記にもそのことは度々触れていた。
普段会っている時は明るくて、空元気ということもなく、全くそんな気配を感じさせないが、それでも週に1度は連絡が取れなくなって、心配で夜中に家まで行くようなことも何度もあった。
その度に彼女の白い腕に新しい傷が増えていた。
原因は過酷な家庭環境と心の支えであった元彼の喪失と自己評価の低さからくる自己否定だ。
というのは、それ関係の本を読み漁って、れなこの話を聞いて、自分なりに理解して出した結論だ。
まずはパニック障害の症状が良くならなければ、いつまで経っても仕事を始めることができない。
というのも朝の通勤ラッシュの電車に乗れないのだ。
調子がいい時は問題ないのだが、一度そういうことがあってから思い込みのプラシーボ効果も相まって、何度も発病してしまう。
それが続き通勤電車に乗れなくなって、乗ってもたどり着けなくて入ったばかりの学校を辞めてしまったのだ。
奨学金で学校に通っていたれなこには学費という多額の借金を背負っていて、返済はまだ先だけれども昼の仕事もできず、男性のからだが嫌じゃないからという理由で風俗嬢を始めた。
つまり、お金を貯めるための唯一の手段がたまたま風俗嬢だったという理由だった。
だから本人も風俗に固執しているわけではなく、昼の仕事ができるならそっちの方がいいと思っていた。
れなこは元々自分で病院に通っていて向精神薬を処方されてはいたが、症状は一向に良くならず、悪くなるばかりだったと言っていた。
それでも俺と頻繁に遊ぶようになってから大分安定したみたいで、症状が出る頻度が大分減ったといっていた。
向精神薬より少しでも効き目のある薬になれたことが少し嬉しかった。
カウンセリングの真似事、スポーツなどの気分転換、本で学んだことは何でも試した。
出不精で昼間出かけたがらないれなこを無理やり連れ回し、色んなところに連れて行った。
その時はそうやってれなこの病気と真剣に向き合うことで、少しでも彼女への罪悪感を誤魔化そうとしていたのかもしれない。
どんなルールを作っても、どんなキレイごとを並べても、結局俺は、彼女が勉強を頑張っている間に隠れて女を作って、その事実を告げることなく勉強もせずその子と遊んでいるのだ。
最低な男。
それが真理だ。
真実を知った時に受ける彼女の痛みと比べると、俺の葛藤などちっぽけなものだろう。
それでもその頃の俺は、彼女への罪悪感と、れなこの将来のことと、自分の将来のことで押しつぶされそうになっていた。
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