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イヴとホテル
クリスマスイブの日。
れなことの付き合いが始まってから2ヶ月が経っていた。
相変わらず俺が勝手に決めたルールをれなこに付き合わせていて、相変わらずの「ホテルにいこっか」攻撃を断り続けていた。
バイトも続けていて、勉強も再開した。
これから先、れなこを支えられる人間になり、落ち着いたらまた学校に通わせてあげたいと思っていた。
そのためにもちゃんと大学に入り、ちゃんと勉強して、ちゃんとした仕事先に付きたかった。
この日、れなこはクリスマスプレゼントにと、俺のために手編みのマフラーをくれた。
「お金がなくて、こんなのでごめんね(笑)」と、いつもの笑顔で、でも少しだけ照れくさそうに俺の表情を伺いながら、キレイにラッピングされた手編みのマフラーを渡してくれた。
「いつの間に、こんなの編んでくれてたの。ていうか編み物できるんだ(笑)」
すごく嬉しくて、でも照れくさくて茶化した俺に、少し不満げに頬を膨らませるれなこ。
「こう見えても中学の時手芸部だったし」
「ああ、似合うかも(笑)」
「前に、彼女に手編みのマフラーもらったことあるって言ってたじゃん。だから悔しくて」
「そっか・・・」
れなこの言葉には明らかに妬みのようなものがこもっていた。
2ヶ月間ずっと待たせているし、相変わらずちゃんと別れていない俺のことを少なからず不満に思っているのは分かっていた。
「ありがと!涙が出るくらい嬉しいわ」
誤魔化すようにウェーブがかった栗毛をかき混ぜる。
「ちょっと、せっかくセットしたのに髪が乱れるじゃん(笑)」
それからちょっと奮発したディナーを食べ、サプライズのプレゼントをれなこに手渡した。
「え・・・いいの?」
ホテルの鍵だった。
「まあ、何もできないけど。クリスマスだし。たまには朝まで一緒に過ごそうかなって」
俺なりの恩返しのつもりだった。
「へー(笑)」
いつもの天使の笑顔が小悪魔の笑顔になっていた。
初めてホテルで過ごした一夜は本当に楽しかった。
れなこのイチャイチャ攻撃を交わしつつ、二人でゴロゴロしながらテレビを見たり、冗談を言い合って、結局ほとんど寝ずに朝まで過ごした。
「未だに別れるのは寂しいね」
池袋駅の東上線の改札前で、いつものように別れを惜しみながら、繋いでいた手を離しバイバイする。
もう胸に穴が空くことはなくなっていたけれど、何度も振り返って手を降る彼女と離れるのはいつまで経っても辛いものがあった。
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