一夜の熱情

8/12
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「む、ぐっ、ぐがっ?」 な、なんだこれは。 甘い、甘すぎる。新手の毒ではないのかっ!? 「う、…く、くあああああっ」 自分は床に転げ落ち、七転八倒しながら喉をかきむしった。 苦い、甘い、喉が、焼けるように熱い。 涙が、汗が止まらない。 しかし… 負けるものかぁっ。 思わず吐き出したくなる衝動を堪え、気合いで呑み込んだ。 「はあっ、はあっ…」 何とかなった。 椅子に座り直し、机に向かう。 すると… 急に身体が熱くなってきた。 ポッポと顔に熱が集まる。 …何かがおかしい。 極度の発汗、動悸、身体の火照りに、息切れ。 やはりあれは、毒だったのかも知れない。 しかし同時に、不思議な高揚感が自分を支配しはじめていた。 これは一体、どうしたことだ? 綾小路(あやつ)への気持ちが押さえきれずに胸からどんどん溢れ出す。 こんな気持ちを何と言ったらいいのだろう。 次々と、活動写真のような甘い言葉が頭に沸き上がってきた。 しかし、今ならいける… この自分が、“アイラブユー(あいしてる)”とでも言えそうだ。 自分は、震える手でペンを握り直すと、猛烈な勢いでそれを動かし始めた。 「うおおおおおおおっ」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!