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予期せぬ出来事は好機!
カエルはジーナのために頑張った。ある時は人がいないことを確認して、ジーナとともに芋や人参を洗ったり、洗い物を運んだり、お使いで何を買うかを忘れたジーナに教えたりと、少しでもやれることがあれば率先して動いていた。
ジーナに好かれるため……という目的もあったが、それ以前に困った人を放っておけない性格なようで、頭で考えるよりも体が勝手に動いているような節があった。それを水晶球で眺めながら、セレネーは良い傾向だと腕を組んで頷いていた。
そんなある日、休日中のジーナが屋根裏部屋の窓を開けて掃除をしていた時のこと。
『あっ!』
窓の近くへ一時的に置いていた小物入れに、一羽のカラスが中を漁り、そこから指輪を見つけ出して持ち去ってしまった。
『やだ……おばあちゃんの形見の指輪が……』
『待っていて下さい! すぐに取り戻します!』
掃除を手伝っていたカエルはすぐさま窓から顔を出し、カラスを目視した瞬間に外へと飛び出した。
ペタタタタ……と壁を走り、家から家へと飛び移る様はカエルという外見にもかかわらず颯爽としていて、水晶球で様子を見ていたセレネーにはカッコ良く思えた。
――が、所詮はカエル。空を悠々と飛ぶカラスの速さと比べれば、カタツムリの歩みのようなものだった。
「こうしちゃいられないわね! せっかく好感度を爆上げできる好機、利用しない手はないわ!」
セレネーは窓を開けると、魔法の杖の先端を自分に向けて力を振るう。
光の粒がいくつも体にまとわりついた瞬間、セレネーの体はツバメに変わっていた。
ビュウッ、と空を切りながらカラスを追い続けるカエルの元へ飛んでいくと、隣に並んで声をかける。
「王子、アタシの背中に乗りなさい!」
「セレネーさん?! は、はい、ありがとうございます!」
驚きながらもカエルは言われるままにツバメの背へ飛び移る。しっかり着地した感触を得てから、セレネーは高度を上げてカラスが飛んで行った先へと進んでいく。
「いい? アタシは王子を連れていくだけ。カラスから指輪を取り戻すのは王子だけで頑張ってもらうわよ」
「もちろんです! セレネーさんの手を煩わせる訳にはいきません」
意外と勇ましいカエルにセレネーは口笛を鳴らす――ツバメの身のため、ピピリ、という鳴き声が漏れた。
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