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家族思いは良いことだけれど……
それからというもの、ジーナは以前にも増してカエルに良くしてくれた。
食後の果実を自分では食べずに姉弟だけでなくカエルに分けてくれたり、夜寝る前にカエルの体を丁寧に拭いてくれたり、今までよりもカエルとお喋りするようになった。
カエルは喜んで、よりジーナに尽くして親身になった。彼女が落ち込んでいれば励まし、喜ぶ時は我が事のように喜び、困った時には知恵を貸し、時には体を張ることも惜しまなかった。
セレネーが傍から見ていても仲睦まじい様子で、微笑ましく水晶球を眺めることができた。
(良い感じになったわね……もう頃合いじゃないかしら)
きっと今ならカエルにキスをしてくれるハズ。
念のために水晶球で占ってみると、望みが叶うという暗示の花が満開になる様が浮かび上がった。
「王子、機は熟したわよ。彼女に解呪を頼んでみて」
水晶球にセレネーが話しかけると、カエルにのみその声は聞こえた。
ちょうど月明りのキレイな夜、いつものように屋根裏部屋で月を眺めながらジーナとお喋りしていたカエルは、意を決して口を開いた。
『ジーナさん……どうか私の話を聞いて頂けますか?』
『どうしたのカエルさん? 急に改まって……』
『実は……私はここより南西にある国の王子なのです。悪い魔女に呪いをかけられてしまい、このような姿になってしまいました。……どうか貴女の口づけで、私の呪いを解いて頂けないでしょうか? そして私の妃になって頂けませんか?』
まさか王子という高貴な身だとは思いもしなかったようで、ジーナは目を丸くして驚きを隠さなかった。
『カエルさん、王子様だったの?! もっと王子様って気取っていて、近づきにくそうって思ってたけど……カエルさんって気さくで優しくて私が思ってた王子様像と真逆だから、そう言われてもピンとこないなあ』
小さく吹き出してからジーナはまじまじとカエルを眺め、それからふわりと優しい笑みを浮かべた。
「分かったわ。お願いだから目は閉じててね、恥ずかしいから」
そう言って、ゆっくりと顔を近づけ――ジーナはカエルにキスをする。
思わずセレネーは水晶球の前で拳を突き上げた。
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