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『え……?』
『女性は体力がないから、力がないから、簡単に弱音を吐くだろうから……って、王立研究所の男性の同期や先輩から言われ続けていますし、上層部も女性の研究者に対して調査できる場所を制限しいるんです。体力も力も、工夫次第でどうにでもなるのに……』
ずっと明るい所だけを見せていたキラの陰に、セレネーは小さく唸る。
(上層部からすれば、危険な目に合ったら責任を取り切れないからってことなんでしょうけど……これは燻っちゃうわねぇ)
魔女界隈でも似たような話はある。ただし魔女の場合は逆だ。圧倒的多数が女性の中、稀に男性の魔女もいる。
魔法使いではなくて魔女。
どちらも似たようなものだが、魔法使いはあくまで魔法に長けた賢い者。魔女は魔法や占術や秘薬や知恵などを駆使して、人々の悩みや希望に応える者。
人へ寄り添って向き合うことに、男女の違いで差が出るものではない。あくまで個人の資質だ。それなのに女性でなければ寄り添えない、女性でなければいけない、と頑なに考える魔女が意外と多かったりする。そのせいで魔女の集会に男性の魔女を参加させないことがある。
(どっちにしても理不尽よね。まさか泥パックのやり取りで、こんな重いものが出てくるなんて……王子も驚いたんじゃあ――あれ?)
水晶球の視点をキラからカエルへ移すと、困惑した様子は既に無く、真剣な眼差しでキラを見据えていた。
『私はただ、キラさんのような素敵な方に触れられると照れてしまう、というだけでしたが……意図せずとはいえ、貴女を傷つけてしまい申し訳ありません』
『カエルさん……』
『不当な扱いに憤るお気持ちはよく分かりました。どうにかキラさんが報われる方法はないか、これから考えさせて下さい。こんなカエルの身ですから、できることは限られていますが……』
あら、思わぬ展開だけど、彼女の心をがっつり掴む好機じゃない! ここでそれを宣言できたのは偉いわよ王子。
見つめ合ってしばらく無言になるカエルへ、セレネーは水晶球越しに話しかける。
「王子、ちょっと聞いてくれる? あ、返事は声に出さなくても、心で思うだけで大丈夫だから」
(セレネーさん?! は、はい、なんでしょうか?)
「アタシに良い案があるから、それをキラに提案してみてくれないかしら?」
(良い案? どんなことでしょうか?)
『フフ……古臭くて理不尽な決まり事はね、前例を作ってしまえば穴が開いて壊しやすくなるものなのよ。ちょっと大変かもしれないけど、アタシが魔法で応援するから。あのね――』
セレネーが案を提示していくと、カエルの体が強張り、汗がダラダラと流れ始める。
『カエルさん、どうしたんですか?』
小首を傾げるキラへ、激しく動揺しながらも『あの、提案が――』とカエルはセレネーの提案を語る。
怖気づくどころか話が進むほどにキラの目は輝き、『じゃあ明日やりましょう!』と即座に快諾してくれた。
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