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デカ過ぎ神竜、目覚めちゃうかも疑惑
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『……ん? 君、新人研究員か?』
『はい、アシュリーと言います』
東の国の最東端にある大岩窟の奥深く。数十人の王立研究員が探索する中にキラは紛れ込んでいた。
探検帽を深く被って目元を分かりにくくし、服の下に胸当てを身に着け膨らみを抑え、カエルが返答して声を誤魔化す。いくつもランプを灯して岩窟内を照らしているとはいえ、薄暗い中では顔見知りでもキラと気づく者はいなかった。
魔法でキラとカエルを転移させたセレネーは、宿屋のベッドの上でぐったりと横たわりながら水晶球を眺める。
(遠隔操作で転移の魔法……一瞬で移動させられるのは便利だけど、疲れるから嫌なのよね……)
正直、ホウキで二人を運んだほうが負担は軽かった。しかし急用でここを離れているという名目上、安易にホイホイ現れる訳にはいかない。仕方なしの選択だった。
大きく息をついて一旦脱力してから、水晶球の向こうにいる二人に注視する。うまく研究団に紛れ込むことができたようで、キラは調査を開始していた。
胸元のポケットに隠れているカエルは、少しだけ顔を出して辺りを伺いつつ、キラの調査を見守る。よく分かっていないながらも、興味深そうに岩窟内を観察しているカエルにセレネーは話しかける。
「ねえ王子、もしかしてアシュリーって貴方の名前?」
(ええ。そのほうが咄嗟に話しかけられても自然に応対できると思ったので……あっ! そういえばセレネーさんに名乗っていませんでした……ああ、なんという不義理を……)
「号泣していて名乗るどころじゃなかったものね。まあ気にしてないから、王子も気にしないで」
(うう……すみません……)
そんなやり取りをしている最中、岩窟内がグラグラと揺れる。火山のふもとにあるせいか、キラたちがここへ来てから頻繁に小さな地震が起きていた。足場が不安定な中、不規則に揺れるこの状況が危険だということで、頑丈な男性のみで調査団が組まれているらしい。
揺れが治まり、しゃがんで鉱物を調べていたキラが立ち上がって辺りを見渡し始めた。
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