カエル、体を張って調査へ!

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カエル、体を張って調査へ!

 キラは神竜の鱗が見つかった所を中心に、ゴツゴツと岩が隆起した地面を念入りに調べ、地震が起きると顔を上げて辺りを注視していた。  何度かそれを繰り返した後、キラが独り言を漏らす。 『わずかだけれど、揺れる時に地面が上下してる……まるで呼吸しているような……』  ゴクリと唾を呑み込み、額に滲んだ汗を拭う。変わり者の彼女でもやはり緊張するものかとセレネーが見守っていると、 『……となると、呼吸が不安定だなあ。お父さんのいびきみたい……うるさかったり、しばらく呼吸止まったり……あっ、まさか食べ過ぎて太って大きくなり過ぎたのかな? ちょっと竜さんの健康状態が心配……』  ……やっぱりこの子、変わってる。  怖がるどころか考察したり、妙な心配をしたり。その呟きを聞いていたカエルの心の声がセレネーに届く。 (根っからの研究者なんですね、キラさんは……素晴らしいです)  この変わり者を好意的に受け入れられるカエルの懐の広さに、セレネーは脱帽しつつ確信する。王子も負けず劣らずの変わり者だと。  キラは研究団から離れて岩窟の奥へと進んで行く。そして行き止まりへ辿り着くと、壁と地面の境目にランプを寄せ、屈みながら念入りに調べていった。  そして深い亀裂を見つけると、そこを凝視し続けた。  ゴゴゴゴ……と岩窟内が揺れる。すると亀裂の奥でわずかに赤い光が見えた。 『竜さん、この下にいるっぽいですね。もっと近づいて様子を見たいけど……つるはしで掘るしかありませんね』 『キ、キラさんっ、そんなことをしたら竜が目覚めて大変なことになりませんか?! しかもかなり深いですから、そこまで掘るのに時間もかかってしまいます』  大胆なことを言い出すキラをカエルが慌てて止める。しかし納得できないようで、キラは『でも……』と不満そうに顔をしかめ、唇を尖らす。  カエルはたじろぎながら、横目で亀裂を見やる。それから表情を引き締めてキラに申し出た。 『ここに細い縄か紐を垂らして、私がそれを伝って様子を見てきます。こんな小さなカエル一匹が近づいたところで、大きすぎる竜には気づかれないでしょうから』 『えっ! ……いいんですか、カエルさん?』 『貴女が望むなら、私は私にできる限りのことをしたいのです。ぜひやらせて下さい』
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