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頼もしく言っているが、水晶球からは近づいてジュッと燃えてしまわないかとか、手を滑らせて亀裂に落ちてしまって潰れガエルにならないかとか、カエルの動揺が聞こえてくる。
恐怖を感じていても即座に申し出たカエルの頑張りに口元を緩めながら、セレネーは語りかけた。
「安心して。何かあれば私が魔法でなんとかするから」
(セレネーさぁぁぁんっ! ありがとうございます!!)
表向きはキリッとしながらも、カエルの心の声は今にも泣き出しそうなほど揺れていた。この芯が強くなり切れないところが、可愛げがあっていいものだとセレネーは思う。
提案通りにキラは腰に携帯していた細い縄を取り出し、亀裂の中へ垂らしていく。ピョンッとキラの胸元から飛び出たカエルは、『行ってきます』と手を振ってから縄を伝って降りていった。
手を滑らせないように気を付けながら、時折飛び出た岩に体をこすらせながら、カエルは下へ、下へと向かっていく。
そしてカエルが縄の先端まで降り切り、赤い光でその身を照らした時――ゴゴゴゴゴッと大きく地面が鳴動し、小さな体が激しく揺れた。
『ゲロロロロォォッ……ゲコォッ! ゲフッ……ケロロォ……』
『だ、大丈夫ですか、カエルさん?!』
『問題ありませんー! 地震で体が揺れただけですー! そんなことより……赤い光は竜の鱗でしたよ! みっちり並んでいます……あとほんのり熱が伝わってきて、温かくて気持ちいいです!』
さっきの揺れで体を岩にぶつけまくって傷だらけにしながら、心配かけまいと何事もなかったような声でカエルが報告する。そんな状態とは気づかぬキラは、目を輝かせて喜んだ。
『ありがとうございます! これで報告することができます。カエルさん、気を付けて戻ってきて下さいー』
『分かりましたー!』
えっちらおっちらとカエルが縄を登り出す。このまま戻れば、そのボロボロの姿にキラが心を痛めるだろうし、カエルも恰好がつかないだろう。そう思い、セレネーは回復の魔法をかけてカエルを治してあげた。
あと間もなくでカエルが亀裂から抜け出せる頃――パッ! とキラが強い明かりに照らされた。
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