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(王子、偉いわ……相手が心から望んでることをちゃんと汲み取って……よくよく考えてみれば、カエルのままでキスできるほど仲良くなれた子って何人もいるのよね。実は天然のタラシね王子)
これで外観も良ければ絵にかいたような完璧な王子様だし、そうでなくても人の形をしていればカエルより相手にドン引きされることはないだろうから十分にモテるだろう。
もしかしてモテすぎて誰かからひがまれたか、嫉妬されたかで呪いをかけられたのかもしれない――そんなことをセレネーが考えている中、カエルは静かに団長へ訴え続ける。
『すぐに規則を変えることは難しいとは思いますが、どうにかできませんか? 異性だ大切な人だと言う前に、同じ研究所の仲間。苦労を分かち合い、支え合っていくことは、研究をより極めるためにも大切だと思います』
喋るカエルに引いていた団長だったが、カエルの物腰と真剣な訴えに心を打たれたのか、真剣な顔つきで大きく頷いた。
『確かに……研究のことを思えば、性差をつけるべきではないと思う。ましてや女性側がそれを苦しいと思っているなら尚更……どうにか改善したいところだが、上がな……』
悩まし気なため息から、頭の固い人間が研究所を牛耳っている気配をセレネーは察する。
(厄介な人種が上にいると大変ねぇ……乗りかかった船だし、どうにか解決してあげたいわね)
腕を組んでいい方法はないと考えてみる。ふと、出会った時にキラが言っていた言葉を思い出す。
(……魔女は知の象徴で、この国では尊敬すべき人物だって言ってたわよね。もしかしてアタシが進言してみたら状況が一気に変わるのかしら?)
そんな単純な話ではないとは思いつつも、動いてみる価値はあるかもしれない。
思い立ったら即行動。セレネーはホウキに乗って、王立研究所へ向かってみた。
「こんにちは。ちょっとこちらの所長さんとお話がしたいんだけど――」
ホウキに乗ったまま正面の入り口を潜ると、その場にいた研究員たちが全員目を丸くし、口を開けて驚き続けた後、誰もが跪いて頭を下げた。
(えっ……ちょっと。そんなに魔女って凄いと思われてるの?)
予想以上の反応にセレネーが驚いていると、バタバタと建物の奥から走ってくる足音が聞こえてきた。
息を切らせながら現れたのは、数人の老研究者たちだった。
「ま、魔女様! わざわざここへ立ち寄って頂けるとは……身に余る光栄でございます!」
そう言って彼らも他の所員と同じように膝をついて頭を下げた。
着ている服が他の者たちよりも豪華で、彼らがここでの権力者たちなのだろう。こちらの話に耳を傾けてくれるなら好都合だった。
セレネーは不敵に笑いながら「少しお話、いいかしら?」と、魔女っぽさを出しながら話を切り出した。
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