魔女の演出は功を奏して

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 幸運のカエルという名目でジーナにカエルを預けて一週間。あっという間にジーナはカエルに慣れ、人のいない所では楽しそうにお喋りをするようになっていた。 『ねえ、カエルさんってどこから来たの?』 『私は元々南西の国に住んでいました。訳あってあちこちを転々として安住の地を求めていたのですが、なかなか見つからず……それで魔女さんに相談をしたら、ジーナさんの所に行くと良いと言われたんです』  ひとりと一匹は毎晩、夜空の月や星を見上げながら語り合うことが多かった。水晶球の前で大きなあくびをしながら、セレネーもその会話を聞いていた。  最近はジーナからカエルのことをあれこれ聞くようになっている。興味を持ってくれているのは好都合だと微笑ましくセレネーが眺めていると、ジーナが不思議そうに首を傾げていた。 『どうして私の所が良いんだろ? カエルさんって幸運をもたらしてくれるんでしょ? きっとどこへ行っても喜ばれるだろうし、誰だって歓迎してくれると思うけれどなあ』  素朴な質問にカエルがたじろぐ。あ、こういう時の言い訳を教えてなかったわね……と心の中でセレネーが謝っていると、どうにかカエルが返答する。なぜか遠い目をしながら。 『えっと……カエル、ですから。カエルというだけで嫌がられてしまうんです。ましてや喋るカエルなんて気味が悪いと……話しかけただけで木や地面に叩きつけられることなんて当たり前でしたから』  ……ああ、そういう扱いを散々受けてきたのね。  王子がカエルになってからの足跡が垣間見えて、セレネーは頭を抱えてため息をつく。おそらく全部お姫様から受けた仕打ちなのだろう。さすがに同情してしまう。  ジーナもカエルを同情で潤んだ眼差しで見つめる。 『ひどい! こんなに優しくて良いカエルさんなのに……これからもずっとここに居てね。幸運がなくなっても気にしないから。私、カエルさんのこと好きだし……』  水晶球が選んでくれた娘だけあって、カエルの中身をしっかり分かってくれていることが微笑ましくてセレネーは口元を緩める。きっとこのままいけば、カエルにキスをして呪いを解いてくれるに違いない――そんな手応えを感じていた。
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