10人が本棚に入れています
本棚に追加
壱の鼻先と前足でかいた程度だから、そんなに深く掘ってはいない。
しかしこの場所の土は、椿の根がしっかりと張った他とは違い、いくらか掘りやすそうな柔らかさがあった。
壱はその柔らかそうな土の中から何かを掘り出したようだった。
「なんだい壱、それを探してたのかい?」
くわえてきたのはノートの切れ端と思われる紙だった。
紙は四つに折りたたまれていた。
壱は鼻先を土で汚しながら、僕を見つめた。
「それがなんだっていうのさ」
僕は内心がっかりだった。
どんな冒険が待っているのかワクワクしていた僕には、それはあんまりな宝だった。
それなのに壱は、「ほらよっ」と言わんばかりに、僕にその切れ端を突き出してくる。
残念な気分のまま壱から紙切れを受け取ると、僕はなんということもなくそれを広げ、目を通した。
最初のコメントを投稿しよう!