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2. but eating with you is
「そのうち、夫婦仲が悪くなってね。
父親は浮気をするし、母親はヒステリックになっていくし。
機能不全家族のテンプレートみたいな家庭になった」
平日のランチタイムは、どこに行っても空いていて良い。
今日も、およそ食事に相応しくない辛気臭い話をしているが、両隣のテーブルに客がいないので気兼ねする必要はない。
「両親が『結婚なんてしなければ良かった』って嘆くたび、自分の存在が否定された気になったから、次第に自分も荒れていった。
そのうち彼らの攻撃対象に自分も加わって、家族間問題はDVにグレードアップした」
「それはむしろ、グレードダウンじゃないの?」
日替わりプレートのステーキを美味しそうに食べる合間に、きみが口を挟む。
トラウマじみた思い出を語っても同情も嫌悪もしないきみと食事をするのは、不思議と心地良かった。
「まあ、とにかく、そんな状態でも母親は外食したがるんだよ。
相変わらず料理が嫌いだからね。
でも、外でも構わず怒鳴り散らす父親となんて極力出歩きたくなかった。
だから、そういう場合、食事は家でひとりで作って食べることにした」
「あれ、君も料理嫌いって言ってなかった?」
「嫌いだよ、味見ができないんだから。
臭いと見た目だけで作っている」
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