3#イノシシとブタ

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 イノシシのブンブーは『ストール』の中の雌ブタに、この外の話を胸いっぱいに大いに話した。  この外には鬱蒼とした森があり、  イノシシの他に、シカやサルやリスやタヌキやキツネやウサギ、そしてクマ、イタチ、テン、アライグマ・・・  その動物達の風貌や出逢ってやりとりしたエピソードを、身ぶり手振りに語り、  池や川で遊んだ事や、空からやって来るカラスやトビと喧嘩した事とか、イノシシの今までの山でスゴシタエピソードも大袈裟に冗談混じりに語った。  毎日人間が銃を持って僕らを撃ちに行く事や、山を削ってメガソーラー発電所を作る計画がある等、今直面している辛い話もこと細かく雌ブタに話した。  「そうなのか・・・」  「この外って、こうなってたのか。」  「イノシシさん。来てくれてありがとう。  この建物から出られなくてさあ。ここで何も知らずに『肉』行きになるのが虚しくて・・・」  盗み聞きしていた他のブタ達は、皆興味津々に豚舎の柵から身を押し付け、  あるブタは興奮気味に。  あるブタは目に涙を流して。  『語り部』のイノシシのブンブーに感謝した。  「あら、私達を飼育している人間がこの建物に入ってきたわ。」  「ぷぎっ?!」  イノシシのブンブーが耳をそばたてると、ドヤドヤと家畜業者が豚舎の見回りに入ってくる音が聞こえてきて、ギョッとした。  「ブタさん!ありがとう!!また来て話の続きしてきて!!」  「うん!!君に会えてとても嬉しかったよ!!じゃあ!!」  イノシシのブンブーは、猪突猛進が如くに豚舎から離脱して駆けていった。  「何・・・この感じ・・・あのイノシシに逢ったとたん・・・身体が・・・蝕む位に・・・苦しく感じる・・・  またあのイノシシ逢いたい・・・  これが、他の雄ブタよりも感じなかった・・・  本当の・・・『恋』・・・?!」  雌ブタは狭いストールの中で、モゾモゾと頭がイノシシのブンブーでいっぱいになり、激しく悶えた。  そして、その頃イノシシのブンブーは・・・  「あれ・・・また・・・フラフラする・・・クラクラする・・・いや、今度は・・・眠たい・・・凄く眠たい・・・瞼が重い・・・  疲れた・・・ここでいいや・・・ここで休みたい・・・」
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