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「お前、絵が得意なんだろ」
名無しちゃんは首を傾げました。絵を描くことは好きではありましたが、得意かどうかと訊かれると、自分では何とも言えないのでした。
からかいくんは面白くありませんでした。誰よりも絵が上手なくせに、名無しちゃん自身もそう思っているはずなのに、あえて認めようとしない態度が。
「嫌味かよ、本当は俺達のことバカにしてるくせに」
名無しちゃんは怯えるように肩を縮こまらせて、小刻みに首を振りました。
「まあいいや。描いてほしいものがあるんだけどさ。お前、カラス好きだろ」
わずかに首を傾けてから、ゆるゆると否定します。カラスが特別に好きだと公言した覚えはありませんでした。
「俺は白いカラスが見たいんだよ。描いてくれるよな」
いつも以上に困ったように眉は垂れ下がり、うつむいてもじもじと肩を揺らしました。そんなの無理だよ、と言いたげです。
二人の会話を(名無しちゃんが喋らないせいで会話にもなっていないのですが)近くで聞いていた先生が口をはさみました。
「それは面白そうですね。では、白いカラスを描いてきなさい」
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