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この子には名前なんて必要ありませんが、名前が無いと不便なことが多いですから、ここでは名無しちゃんと呼ぶことにしましょう。
名無しちゃんはかわいくない子です。大人は『かわいくない』という言葉をいくつかの意味で使いますが、ここでいう『かわいくない』は、そのままの意味です。
つまりは、実験に失敗した後みたいに爆発した髪型、つき出たおでこ、あつぼったい一重のまぶた、豚を思わせる低い鼻、たらこくちびる、原始人のように角張ったあご。
おまけに、ふざけて作ったのかと思われるほど分厚いメガネをかけていました。よく晴れた日には空の色を反射して水色に光ります。そんな空色眼鏡の女の子を、クラスのみんなは大変面白がりました。
何一つ大げさではなく、名無しちゃんは本当にかわいくない子でした。
ですから、当然のように学校ではいじめられていました。仕方のないことです。人間は誰かをいじめているとき、とても生き生きする動物だからです。
名無しちゃんがいじめられる理由は他にもありました。
いつも無口で、口を開くのは「おはよう」「さようなら」くらいで、他は首を縦に振ったり横に振ったり傾げたりしていました。いつも困ったような顔でおどおどしていて、笑った顔は誰も見たことがありませんでした。
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