桜の日との決別

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桜の日との決別

 その日私は出会った。  桜が咲く春の日のこと。ふと足を運んだ美術部の展示会で彼は静かに受付に座っていた。  クラスの男子とは違って上品な立ち振る舞いをする彼に、私は一目で惹かれた。  先輩だという彼からなんとか連絡先を聞き出し、このまま近づけると思った。  彼はその後すぐに卒業してしまった。それは寂しかったけれども、偶にするメールのやりとりは心地よかった。  でも、仕事が忙しくて数年経つとすっかり疎遠になって、そんなある日、彼から久しぶりにメールが来た。添付された写真には彼とその恋人が写っていた。  視界が滲む。仕事に負けないよう黒とピンクのネイルで武装した指でアドレス帳を開き、削除ボタンを出す。  さぁ、この愛を殺せ。
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