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あそこのヤマオカさんちにはちょっと気を付けるのよ、とママは云う。
ヤマオカさんちは、際立ってゴミ屋敷だったり豪邸だったりするわけじゃない。
でも、白い塗り壁と青い和風の瓦、某のび太くんちみたいな昭和感ありありなその佇まいは、よく似た見た目の家が並ぶ新しい住宅街の一角では浮いていた。
ただ、建売を買って越してきた住人の中で(うちもそのクチだ)、ヤマオカさんちだけずっと昔からそこに住んでいる。
どうしたって後から来た住民との間には溝ができてしまうのかもしれないけれど、理由はそれだけじゃない。
ご近所の噂いわく
「あそこは変な宗教をやっている」
選挙の時期にしつこく電話をかけてきたり、聖書片手に押しかけてきたりするの?
ママはそう聞き返したけれど、そのどちらでもないそうだ。
出歩くときはたばこの吸い殻"だけ"を拾い集めていたりする、とか。
夜の決まった時間に笛の音とともに何かを唱和している声が漏れ聞こえてくる、とか。
夫婦そろって早朝に橋のところでオタマジャクシやらカエルやらをバケツに捕まえている、とか。
一階の北東の部屋だけ窓を外から打ち付けてある、とか。
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