隼の恋文

2/6
前へ
/6ページ
次へ
 秋の風が徐々に冷たくなってるけど、いかがお過ごしですか? こういう手紙を書くのは慣れてなくて、所々文章がおかしいかもしれないけど、それはお許しください。  私は今、あなたがいる街から東へ遠く離れた神奈川県にある国防空軍に基地に赴任し、毎日のように戦闘機に乗って訓練を続けています。新聞やラジオからのニュースであなたも知ってると思うけど、この数ヶ月前から太平洋沿岸とインド洋沿岸の国々に様々な怪獣が立て続けに出現して、各国の軍隊が他国と連携してそれらの怪獣の駆逐に奔走してます。もちろんこの国も例外ではなく、つい先日には伊豆諸島の薊島に怪獣が出現し、その怪獣との交戦はなかったけど戦闘機に乗って薊島へと飛びました。眼下に広がる瓦礫だらけの集落と赤い炎と黒煙で島を埋め尽くす大火の光景は、今も忘れません。この手紙を書いている今日も、茨城の鹿島灘沖に怪獣の姿が確認されたという一方が入り、戦闘機に乗ってその上空に行きました。しばらくの間その上空を飛び続けたけど、何も確認できないまま基地に引き返しました。世界中で起きている怪獣災害のニュースが多くなって不安な日々を過ごしていると思うけど、私や同じ隊の仲間は日本中の人々が抱いている様々な不安を少しでも払拭する為に日々の訓練に全力で取り組んでます。私の事は心配しないでください。明日もこれからも、強い気持ちで頑張ります。  追伸。もうすぐ冬だから、体調に気を付けて下さい。また手紙を書きます。  1954年 11月3日
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加