隼の恋文

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 秋の終わりが目に見える日々だけど、いかがお過ごしですか? 手紙を書く時間が無くて、かなり間が空いてしまってごめんなさい。  あなたはもうニュースで知ってるとは思うけど、先日、仙台に怪獣が出現して国防空軍がその怪獣と交戦をしました。実は、その場に向かった戦闘機部隊の中に私もいました。仲間と共に長い間仙台上空を飛んで怪獣に攻撃を加え続けたけど、ダメでした。ミサイルと機関砲の弾薬が切れて基地に戻っている間に、怪獣は突然引き返して太平洋へと姿を消したと、他の部隊の仲間から聞きました。雑誌や新聞で「怪獣大戦争」や「終末戦争」などと名付けられた世界中を巻き込むこの事態は、まだしばらく続きそうな気がします。世界各国の軍を助ける形で派遣されたUSA軍による怪獣の駆逐作戦が成功するようになって出現数は少なくなったらしいけど、得体の知れない化け物との戦いに備える日々を過ごしていく中で、時々心が折れそうになります。でも、そう思ってしまうのはあなたも一緒なんだと思うと、あなたや世界中の人々が落ち込んでいる中で自分が気落ちしている暇は無いと視界が定まらない目を見開いて、自分は強い、やれば出来るんだと思ってはっと奮起してます。私達が人類の最後の希望なんだ、そう思ってこれからも訓練に励み、戦闘が起これば確実に怪獣を駆逐します。近いうちにまた手紙を書きます。  追伸。入院した事を電報で知りました。傍にいてあげられない私をお許しください。戦いをすぐにでも終わらせて、あなたのもとにすぐに帰ります。必ず。  1954年 11月22日
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