隼の恋文

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 あなたのいる街で雪が降った事が新聞に載ってました。いかがお過ごしですか?  あなたが体調の悪化のせいで外出禁止になった事を、電報で知りました。やはり、あの時のせいでしょうか、私は不安です。だけど、こんな時にあなたに伝えなきゃいけない事があります。私のいる部隊が、USA軍を中心とする人類政府世界平和理事会に承認された多国籍軍に参加する事になり、近いうちにアフリカへ渡る事になりました。何故こういう事情になったかに関しては、詳しくは言えません。ごめんなさい。  でも、この手紙を今読んでいるあなたならすぐに察してるでしょう、このような事になった経緯を、そして、私が行こうとしている先では長い戦いが待っているという事を。戦いを早く終わらせて帰りたいと言っておきながら、その帰れる時がもう少し先になってしまう事をお許しください。戦いの為に遠くの地へ向かうのは、前の大きな戦争で慣れてます。終戦の時も、大海原を往く数少なくなった空母の中で迎えたから。ただ、あの時に敵対していてあなたを苦しめたUSAやヨーロッパの国々と仲間として共闘する状況を未だに現実と思えない節があったりして、正直な所、不安です。でも、今の世界の状況を考えてたら、その不安で気落ちしている場合じゃないと無理して気分を高めてます。大丈夫です。本当に大丈夫です。世界を救う為だから。  しばらくはこの日本にいると思うけど、色々としなければいけない事があるから頻繁に手紙を出せないと思います。本当にごめんなさい。寒い季節だから、お身体には気を付けて。  追伸。改めて、あなたの元に早く帰れそうになくて、ごめんなさい。色々な事が頭の中を駆け巡って、この手紙の文章が変だったかもしれない事をお許しください。  1954年 12月1日
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