会話できる空気

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その日、僕は……自殺未遂した。 その日とは…… 東京の新宿区にある『リブ・フォトクリエイツ』でカメラマンをしている僕が、退所後、久々にタイプの女と出会った日のことだ。 その日、僕は朝から、いつものようにブラウン色のジャケットとジーパン姿で出勤した。 そして、昼休みを挟んで、モデル撮影や新製品の撮影といった通常の仕事を完了したのが、午後5時頃だった。 すぐに、スタッフが用意してくれたコンビニ弁当を食べてから、よく寄る『スナック愛』へ向かった。 そのスナックは帰る駅方向、5分ほどの行ったテナントビルの3階にあった。 入店してすぐ、カウンターで1人飲んでいた女に一目惚れした。 服装には、それほど魅力は感じなかったが、タイプだったので気に入った。 女の名はミカといった。 なんとか口説き落とした僕は、彼女を連れてタクシーに乗り、中野区のローヤルコーポという3階建てマンションへ帰った。 そして、朝一の仕事でも遅刻しないため……と住んでいる、1階の自宅に連れ込んだ。 無論、ベッドで楽しいコトをするためだった。 そして一応、順調に運び、ミカをベッドに誘い込んだ時、彼女は僕の体を見て、バカにしたのだ。 僕は、つい頭にきて、 「なんだとー! ゲス女! とっとと帰れー!!」 彼女は「バーカー」と笑いながら言うと、さっさと帰って行った。 僕はガッカリして、リビングのソファに座った。 が、全てがイヤになり、ふと冷蔵庫の上を見た時、たまたま目に入ったロープをカーテンレールから下げて、自殺しようとした。 すると、そのロープが何故か切れたのだ。 「あれ……変だな……? まるでハサミで切ったようだ……」 ハサミは隣の雑用部屋にあるはず……と、確認に行ったが、やはり机の上にあった。 僕は、よく分からなかった。 が、どうにも気持ちが治まらず、今度は睡眠薬を飲むと、キッチンに行ってガスの元コックを開いた。 つづいて玄関ドアを施錠(せじょう)した。 「よし。これで大丈夫だ」 しかし寝室へは行かず、ガスが吸いやすいようにリビングのソファで寝た。 これで全てからおさらば……だな……と思いながら……。
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