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あの夜以来、火夜は北衛と湯浴みを共にしなくなった。
添い寝をねだることもなくなった。
ただ時折、北衛の閨を訪うようにはなった。
それは決まって、蜥蜴人たちを屠った日の夜だった。
狩りに沸き立つ雄の血が、未だ若い火夜を煽り駆り立てている――。
そう考えると、北衛は火夜の訪いを無下に拒むことは出来なかった。
火夜へと触れ、その欲望を鎮めながらも、北衛はけして火夜には肌を許さなかった。
火夜を閨へと招き入れ、寝台に共に伏している時でも北衛は白い夜着をまとったままだった。
けして、とも布で作られた腰帯を火夜に解かせることも、又自らが解くこともしなかった。
それでも火夜は、北衛へと従っていた。
それも表向きのものだと、北衛自らは思う。
今夜のようについはずみで、夜着の襟や裾を割られそうになることがあった。
遠からず遅からず、堪え切れなくなる時が必ずや訪れる――。
北衛は先見の力を有してはいなかったが、分かった。
それが火夜がなのか、――それとも己がなのかは、北衛にも判じることが出来なかった。
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