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暖かい春から夏が隙を見て顔を出し、生き物が活発になる季節。好奇心の塊である小学生には、地面を這う虫から空を飛ぶ鳥まで全ての生物が興味の対象であった。
ある朝、登校しているときに道路脇の雑草から飛び出てきたトカゲを捕まえた。僕は、人間以外の生き物というなんとも不思議なものを手で包んだ。少し隙間を開けるとかわいらしい瞳を持った小さな恐竜が顔を出す。僕はそのトカゲを持ったまま学校に向かい、教室に行く前に校舎の裏にあるゴミ置き場からジャムの瓶を取った。
一年二組の教室に入ると、トカゲを持った僕の周りに珍しがって沢山の人が集まる。そして口々に言った。
「かわいい」
「すごい」
「どこにいたの?」
「触らせて」
クラスメイトに注目されると小学生なら誰でも得意な気分になる。皆もとてもかわいがってくれたので、僕は生き物なんて飼ったことはなかったけれど、トカゲを飼うことに決めた。ジャムの瓶に茶色くて柔らかくてザラザラとした小さなそれを入れた。
逃げないようにしっかりと蓋を閉めて。
次の日学校に来たとき、瓶の中に入れたトカゲは動かなくなっていた。最初は寝ていると思ってそっとしておいた。給食の時間を越えても置物のように動かないそれを見て、心配になったときにはもう遅かった。
担任の先生に見せに行くと、先生は大きくため息を吐き、僕を傷つけないよう優しく言った。
「トカゲさんも、香山くんと同じで息をしているから、閉じ込めたら苦しくて死んでしまうんだよ」
僕が「じゃあこれは死んでるの?」と聞くと、少し困った顔をして「お墓をつくってあげなさい」とだけ先生は言った。
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