マタアイマショウ

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イライラする。 自分にウンザリする。 どうして、こうも、要領が悪いのだろう。 周りは、みんな上手くやっているのだから。そうしないと。 教室に、戻りたくない。 あ、階段、上りすぎた。 ホントに、嫌いだ。自分。 あれ、ドアが開いてる? 屋上って入れるんだ。知らなかった。 誰か、いるのだろうか。 いた。一人。 何かが聞こえる。歌? 歌、みたいだな。 ここからだと、よく聞こえない。 近くに行ってもいいかな。   今まで見たことない 泣き顔を きれいな、声だな。   見て 僕は君の手を握ってた   この手を離せば もう逢えないよ すごく、楽しそうに、歌う人だな。 「いい歌だね。なんていうタイトル?」 歌うの、止めちゃった。 話しかけたのだから、そうか。 びっくりさせちゃったみたいだ。 人って、驚くと、ホントに、目が真ん丸になるんだね。 「あ、ごめん。そんなに驚くと思わなくて。」 これが、怪訝そうな顔、というものか。 そこまで、堂々と、不審がられると、なんか却って面白く感じる。 「いや、気持ちよさそうに歌ってたから、なんていう曲なのかなって聞きたくなって。」 我ながら、適当な発言だ。 あ、でも、何の曲か、気になるな。 じゃあ、ウソではないということで。 あれ?帰っちゃうのか。 まあ、他人に歌ってるところを目撃されたら、それが自然な反応だろうな。 「あ、帰るんだ。ごめんね、なんか、邪魔しちゃって。」 振り返った。 まじまじと顔を見られている。 「また会いましょう。」 「え?」 「シーモのまた会いましょう。」 「あ。あぁ、ありがとう。」 答え、返ってきた。 そうか、シーモのまた会いましょうという曲なのか。 配信サイトにあるかな。 いつも、屋上に来てるのかな。 また、会いたいな。
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