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もう達くというぎりぎりのところで雨宮は手を離し、愛撫を中断する。やっと達けると思っていたのに急に刺激を失い、なぜと切羽詰まった目を向けてくる黒田に、雨宮は意地悪な笑みで答える。
「まだ課長は達きたくないんですよね? いいですよ。何度でもやってあげますから」
今度は左手で根本を握り、先端をはち切れんばかりに充血させた状態で亀頭責めを再開する。実はここからが本番だ。
雨宮は反応の具合から射精を察知することができるため、やろうと思えば五回でも十回でも一晩中でも「寸止め」できる。これをすれば客は発狂したように悶えて泣き叫ぶわけで、これがS女王様の名をほしいままにした雨宮の真骨頂だった。
だが雨宮が言わば最高レベルなのに対し、黒田があまりにも初心者すぎた。それから二度寸止めしたところで黒田の腹筋が細かく震え出し、目の焦点が合わなくなってきた。
息苦しそうにするというか、なんか息ができてなさそうだったので口の戒めを解いてやると、黒田はとっさにつばを呑み込むこともできず、透明な液体が口を伝ってシーツに染みていく。そのとろけきった淫らな表情に雨宮の方が参ってしまう。
まだ寸止めしたいという欲望をぐっと抑え、雨宮は再度チャンスをやった。
「どうしてほしい?」
「いっ……達かせて……」
黒田は息も絶え絶えになりながら、それでも今度は自分の欲を認めた。
「ふぅん。それが人に物を頼む態度ですか?」
「……達かせて……くださ……い……」
端正な顔を涙と唾液でぐちゃぐちゃにして懇願され、もう許してやってもいいはずだった。当初の目的は十二分に果たしている。
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