03 エレベータプレイ(2)

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 保育園児や幼稚園児ではなく、大の大人にそんな顔をさせたと思うと、雨宮はすっかりご満悦だった。  雨宮は黒田のズボンから手を抜き、ガムテープを破いてやりながら意地悪く言った。 「こういうの、好きなんですね」 「ち、違う……こんな……」  そんな言い訳など聞いてやらず、雨宮は耳元で囁くように宣告した。 「これからも貴方の望み通り、俺が課長さんを滅茶苦茶にしてあげる」 「……」  黒田はもう何も言わず、うつむいたようにも、頷いたようにも見える反応をした。まるで甘い誘惑に捕らわれたように。  こんなかわいい人、誰にも渡さない。  俺のものだ。  雨宮は感じたこともないような独占欲に駆られながら、自分のものだと印をつけるように黒田の唇をすすった。  雨宮は朝から舞い上がっていた。  この月末でクビになることなどどこ吹く風で、廊下でスキップをしそうになるほど浮かれていた。  今日の朝のあの光景。  雨宮が挨拶すると、課長席にいた黒田はびくっと体を引きつらせ、雨宮と目が合うと気まずそうに目をそらした。 『お……おはよう……』  その恥辱に震える声を聞いただけで、雨宮は両手を握ってよっしゃあ! と叫びたくなったぐらいだ。  俺、課長に、意識されてる……!  昨日、淡々とした態度に翻弄された分、今日はそれを確認できただけで天にも昇る気持ちだった。
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