03 エレベータプレイ(2)

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 するとその時エレベータが来て、別のフロアの社員が数人下りてくる。その中心にいる女性社員を見て雨宮はおお、と目を向けた。  天使の輪ができるようなさらさらの髪。薄桃色の小さな唇。スレンダーでありながらやせぎすでなく、奇跡のように胸だけ豊かな衝撃の愛されボディを実現。きらきらと星が輝くような綺麗な笑顔に周囲の男どもは釘づけだ。  雨宮も社内のイントラネットで写真だけ見たことがあるが、間違いない。あれが専務の娘、つまり黒田の婚約者の若月綾香だ。  黒田と同じく四月に東京本社から異動してきた人で、正確な年齢の情報はないが、入社年度から雨宮と同じ二十六歳だと推測される。  そんな彼女の美人さはフロアが違ううちの部署でも話題になったほどで、その時に黒田と婚約しているという話がこのビル中に広まった。要するに注目を集めたのは専務の娘であって、黒田の方がおまけなのだ。  いいぞいいぞ。  彼女のあまりの美しさに、雨宮はすっかり嬉しくなった。  こんなパーフェクトにイケてる女性が、わざわざマゾでインポな男を相手にするはずがない。黒田は性癖がバレた時点で用済み婚約解消で、めでたく雨宮の専属マゾ奴隷決定である。  この勝負、もらったな。  雨宮は無意味に勝ち誇りながら職場に戻った。  昼休みで照明を落とした薄暗い部屋。  まだいないかなと思ったのだが、奥の課長席にはきっちり黒田の姿があり、思わず笑みを浮かべながら近づいた。 「お疲れ様です」 「……」  黒田はびくりと身を縮め、とっさに周りに視線を走らせた。
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