04 課長の反撃にめろめろです

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 がばっと携帯に飛びつき、写真フォルダを確認する。一番最後に撮影したので先頭に来るはずの課長の写真は、跡形もなく消えていた。 「ず、ずるいですっ」  思わず抗議の声を上げると、課長はまじまじとこちらをうかがっていて――。 「その様子だと、バックアップはないんだな」  ――あ。  やられた、と思った。  写真を削除されても、まだコピーが家にある、という芝居をすることもできたのに。 「……」  これで、脅す材料がなくなった。  慌てた反応を見せた後では、まだ脅す材料があると匂わせることもできない。  黒田は呆れたようにテーブルに両肘をついて、手を組んだ。 「君を見ているとどうも行き当たりばったりだから、まさかとは思ったが……よくその無計画さで人を脅そうと思ったものだな」 「……」  ぐうの音も出ない。 「しかも写真も写真だ。なんの証拠にもなりそうになかったぞ」 「す、すみません……」  貧相なネタで脅していたことがバレてしまい、もうほんとにいたたまれなくなって縮こまっていると、深いため息がもらされた。 「要するに、脅しを実行に移す気はなかったんだな」 「ええと……そうです」 「人を安易に脅すんじゃない。いつか自分に跳ね返ってくるぞ」  黒田は気を取り直したように箸を取り、またトンカツを食べ始めた。  ……。  課長は多少眉を寄せてはいるけど、それほど怒っている感じはなかった。  なんというか、課長は優しい。
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