04 課長の反撃にめろめろです

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 どう考えても雨宮が加害者で黒田が被害者なのに、課長はそういう枠組みでは捕らえていないようだ。少なくとも二日前からは、この人は雨宮個人を見てくれている。  つくづくできた人で、いつも欲望いっぱいの自分が少々申し訳なくなってくる。  そう言えば、もう脅しは終わったのに、出ていったりはしないんだな……。  食べ終わるまではつきあってくれるということなのかなと解釈し、雨宮は小さくなりながらも食事を再開した。 「……それで、一応聞くが、今日の本題はなんだったんだ」 「本題? あったんですか、そんなの」 「まさか一緒に食事をするためだけに呼び出したわけじゃないだろ」 「そうですけど」  というか、たった三十分ならそれしかできないだろうにと思うのだが、黒田は不可解だとばかりに眉間に皺を寄せた。 「……なぜそんなことをする。私が君に応えられるわけがないだろ」  苦々しい声ながらも、これはいい感じだぞと雨宮は密かに思っていた。  そんなことを聞いてくるということは、脅しがなくなっても黒田は雨宮のことが気になるということだ。 「そうですか?」  挑発するように質問を質問で返すと、黒田はうなるように声を低くした。 「そもそも、私には婚約者がいるんだ」 「その気になれない婚約者が?」 「……それは私の問題だ。彼女のせいじゃない」 「でも俺相手だといけましたよね」 「……」  黒田の眉間にものすごく深い皺が刻まれていく。跡が残るんじゃないかと思うぐらい。  自分を責めているような深刻な顔を見て、なんだかかわいそうになってくる。別にこんなことで虐めたいわけじゃないのに。
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